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静寂の時間 no.6

  • 2月25日
  • 読了時間: 3分

更新日:2月26日


雨の日。

木の枝から水晶のような雫が落ちてゆく、絶え間なく。


車が通るたび

水上ボートが通っていったような音がして、この時間は国道がどこかの運河のように思えた。


窓の外の翡翠のような静かな光は

焼く前の生豆のような色合いをしていた。


先程いらしたお客さんが帰ったあと

昨日の失敗し続けた焙煎を振り返りながら、集中して豆を焼いていたとき、


最初の1ハゼ頃までは集中できていたけれど


気がつくと頭の中は、新渡戸稲造、新渡戸稲造、とだんだん新渡戸稲造のことで侵食されはじめた。


実は以前、お店をオープンして銀行に口座を作りに行った時、


銀行の椅子に座って呼ばれる順番を待っていたら

誰も人が周りに座っていないのに、どこからともなく


"新渡戸稲造も知らないなんて"


とささやく声が聞こえた。


本当に、名前しか知らなかったので

調べてみたら、5000円札に描かれている人物だった。


あの声は銀行に住んでいる精霊だろうか。

それともお札にまつわる精霊だろうか。

(それとも疲れていたのだろうか。)

なんて考えて、


まるで私に、銀行に来たならお金に描かれている場所や人物、少しくらい勉強しろ、とでもいっているかのように思えた。


当時、図書館の縄文土器をみてなぜか北原白秋のことを知りたかった。


けど、新渡戸稲造のことに先に興味が移ったので北原白秋は保留にして時を待つ。


それからしばらく新渡戸稲造のことを散歩しながらラジオで聴いた。


札幌農学校にいたこと。

夢中になった先生の話。

勉強熱心だったこと。

すごくたくさん本を読んでいたこと。


ああ、おもしろい人柄以上に、軸はかなりの勉強家だなと思った。


さっき知ったけど、盛岡出身だった。

宮沢賢治と近い。なぜか、嬉しくなった。


その時のことが、今日、この時間に、なぜかたくさんフラッシュバックして、

コーヒー焙煎の集中を妨害した。


するとお急ぎのお客さんが来て、焙煎していた手を止める。

豆も2ハゼを過ぎていたし、新渡戸稲造リフレインにより全然集中できていなかったのでその豆は諦めて冷却した。


そのお客さんは、お菓子を置きに来てくれただけらしく、お菓子を置いて風のように、すぐさま帰ってゆかれた。


そのあと、さきほどの諦めたコーヒー豆を試飲、テイスティングしたら、焙煎の記録をみたり、参考文献を読みながら考えて、調べて、やってみて、なんども見比べて、苦戦しながら丁寧に焼いた豆より全然おいしかったので、少し憤慨した。


新渡戸稲造のこと考えていたら、

おいしいコーヒーができた。


よくわからないけど、飲んだら温かい気持ちになった。


知らないことだらけだ。


とりあえず、新渡戸稲造に少し興味が湧いた。







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