透明な問題集 Transparent workbook
「道半ばの問題なんて問題ではないよ。」
一旦ペンを置いて彼は答えた。
コーラの入った紙コップはたっぷりと水滴を纏って、白いペーパーナプキンに円を描き出していた。
「ひとつの問題を解き終わって、はじめてその問いは全貌を現す。」
「そ、じゃあ僕の前には何の問題もないってわけ。」
「どんなに分厚かろうが、開かなければそれは透明な問題集にすぎない。」
「確かに、まあ、そうだとも。」
よれた紺色の鞄を持ち、"お手洗いに。"と言ったきりもう戻らないだろう彼を置いて、彼はガラス板一枚向こうの闇と対面しながら、ひたすらに目の前の問題と向かい続けた。
何かの命題に決着がついた時、はじめてその人にとってオーダメイドの道が示される。
それから彼が新しい問題集を買うことはなかった。
そして彼も。
