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モリオン morion quartz

  • sotonoin
  • 3 日前
  • 読了時間: 3分

更新日:2 日前


わたしの目は黒いので

辺り一面の光景がどれもきらきらと輝いて映りこんでいた。


陽光のもとで茶褐色に見えたら、モリオンというよりはただの煙水晶のようだ。


「鞄が開きっぱなしですよ。」

「また紐がとれていますよ。」


「あ、ほんとだ。」


「教えていただきありがとうございます。」


外側というものはよく映す鏡。


だから、なにかに気づかされてから居住まいを正すのにそう時間はかからない。


すくなくとも、

花が咲いたら咲いたと判るし、


雛がいなくなれば皆巣立ったと判る。


壁にぶつかれば痛い。


しかし、"心"というものはどうだろうか。


外側から決して見ることのできない、自分の内側にあるものは。


そこに、たとえ何かきらきらと芽生えていたとしても、不可視ということはそれが成長しはじめたのか、枯れてしまったのか、判別がつけられないということ。


身体はすっかり成長しても、


心の中はあたたかい卵の殻の中にあるかもしれない。


もしくはすでに飛び立ってそこにはいないかもしれない。


なにかわかった気になれたとしても、


結局はわからない。


わからないものは、


どうすればいいかわからないからとりあえず他を見る。


"どうせ、無理だ。"

"こんなものは、ここには必要ない。"


といって自分の抱えている何かをえいと投げ捨てて身軽になり、喜ぶ人があるときは、


それを見ていたもののうち、何人かは、

いとも簡単に自分の抱えていた何かを、同じようにえいと投げ捨てていた。


それらは仮にももし、捨ててはいけないと判ったときには、自分の投げたところまで自分で取りに行かないと戻ってこないだろう。


時間は距離だけを延ばしていく。


"これこそが、ほんとうのわたしです。"

"わたしの本気の力をみせてあげよう。"

"わたしの想いは誰にも奪えない。"


といって自分の抱えている何かを頑なに、ぎっちりと握りしめすぎてぱりんと壊してしまった人が、あっけからん表情で、粉々になった何かを指差し、


"わたしは解き放たれて新しい形になった"


と言う様子を見ていたもののうち、何人かは、

同じように抱えていた何かをぎゅっと強く握りしめながら、早くわたしも解放されますように、と祈っていた。


粉々に散らかったそれらはもとのかたちには戻らないだろうし、戻す必要があるならば破片を一つ残らず拾い集めて、遺跡から見つかった土器のように、丁寧に、接着しなければならないだろう。


記憶は破片を遠くへ押し流していく。


振り返ると無知というものは一種の愚かさと、それに付随する虚しさを次々と明らかにしていった。


どこにも、どこにも、あてはなさそうだ。


わたしはその抱えている何かをどうしようもなくポケットにしまった。


"これでとりあえず両手は身軽だ。"


あらゆるなにかに急かされて、


はやくなんとかならないものか、という焦燥が、

火力だけをこうこうと上昇させ続けたのち、もくもくと黒煙が立ち上り、辺り一帯はたちまちモリオンのようになってゆく。


見えないものは、見えない。


よけい、見えない。


だから、なにかが見えるときには、よく見て、考えたり、問いかけ続けないといけない気がした。


モリオンはどきどき月光にあてると良いそう。








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