虎目石 tiger eye6月23日読了時間: 1分あの木の実を取ってこいと誰かが背中を押したけど大きく手を伸ばしてぼくにはもちろん届かないからぼくは木から落下してそのまま落ち続けて金輪の際にぶつかって痛みと熱い涙だけが塩辛く頬をつたいいつまでも泣いてたって仕方がないからぼくは這いつくばって目の前の道をゆくとこれを人は夢というのか?これを人は幸運だというのか?
真夏の幻日 A sun dog in the middle of summerドアを開ける 一歩外へ踏み出すと 蝉の声が猛烈に響く 青い陽炎の中を ビーチサンダルで歩く 住宅地を抜けて トウモロコシ畑の中を 途方もなく歩く 水平に流れ続ける 向こうの入道雲を目指して まだ金色の太陽は高く トウモロコシの葉は ビリジアンよりも綺麗だった ふと自動車が横を通り越し 砂時計をひっくり返して 過去を見た そこには二人の自分がいた 人生はね たくさん選べるんだ 君が望めばどれだけでも
若さ greenhorn若さというのはね ああ、がんばっているんだね、と そのくらいでいいんだよ、と 影たちが微笑む わたしは影たちに一礼す。 きみは泣かないのかね 「涙はながらく出ておりません。」 そうかね 「もう少ししたら出てくると思います。」 ああ、そういうあんばいね。 影たちが微笑む しっかり食べなさいね、と。 わたしはもう一度 影たちに一礼す。
あじさいを追う Follow the hydrangea正午 柳の下の青い紫陽花を追って 少し傾斜のある川沿いの道を歩き きり雨の中 青白く光り 浮かぶ ぼんぼりのような青い紫陽花を追って すこし汗ばんだ背中 シャツをすり抜ける風は涼しい 古い屋敷の窓には 切り絵のように白いレースカーテン その奥はだだ暗い 長らくこの季節を待っていたというのに 気づかぬうちに わたしの横を青い紫陽花の群れが成す 一本の細い糸のように するりと 抜け落ちていってしまうよ