或る日の切れ端 The piece of the day
- 3月30日
- 読了時間: 1分
更新日:4月20日
春は弱火でじっくりと煮詰めているキャラメルのように、しばらくは明るさを残したままで、ゆったり、ゆったりと暮れてゆく。
外靴を脱いで、のそのそと台所へ向かい、水道からその辺のグラスに半分くらいの水を注ぎ、食パンを一切れ皿にのせ、やっと腰を下ろした瞬間に、身体じゅうの疲れが鉢植えの底から溢れ出てきた水のように流れ出す。
(さっきよりも日が暮れてきたなあ。)
食パンを手に取って焼かずにそのまま一囓りすると、少し酸味のある、強い酵母の味がじんわりと広がった。
(パンはいきものなんだよなあ。)
"ちゃんと、トースターで焼いて、少し煮詰めすぎたくらいのブラックカラントのジャムをスプレッドして、クリームチーズを大きめのスプーンひとすくい乗せようか"
"チーズをたっぷりのせて、少し端を焦がしたチーズトーストにしてもいい"
"ベーコンのオイルがたっぷり滲んだ玉ねぎのスープに浸してもいいなあ…"
食べ終わるまでひとり、あらゆる心象に耽った。
そして
そのまますぐさま眠りこんでしまった。
